ぽっかぽか

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【書評】事例によって受容と共感がよく分かる「共感的カウンセリングの面接術」古宮昇

こんにちは!大学院で心理学を学んでいるあみかです。

課題の合間にボチボチ本を読んでいるので、ご紹介させていただこうと思います。

 

今回紹介するのは、「プロが教える共感的カウンセリングの面接術」という本です。

古宮昇著、誠信書房出版となっています。

 

この本は、実際にカウンセリング場面でのクライエントとの関わり方、向き合い方のようなものが書かれています。

 

大変参考になりましたので、ご紹介させていただきます。

 

 

 

基本データ

 

対象:初心者の心理士

著者の立場:教授・実践者

著者の学派(オリエンテーション):来談者中心療法

発売年:2019年

 

 

まず、対象は駆け出しの心理士といったところです。

心理士としてのトレーニングの積み方まで書いてあります。

 

一方、何を説明するにも事例を用いていることから、ケースを持ったことのない院生や大学生が読んで教科書的に理解するというよりも、多少経験したことがあって、困ったことがある人の方が理解しやすそうな内容になっていました。

 

もちろん、ケースを持ったことがない人でもイメージが掴みやすいという意味で事例はためになりますが、ケースを担当してからの方がより深い学びになるように感じました。

 

 

著者は、大阪経済大学教授です。

過去にアメリカで総合病院精神科、児童相談所での勤務歴があり、現在は開業臨床をしているようです。

 

オリエンテーションとしては、来談者中心療法をベースにしているようですが、防衛と抵抗、転移解釈などときどき精神分析的な考え方が出てきます。

 

純粋なPCA信奉者でも、そのくらいは手の内にいれておいて良いように感じます。

 

 

発売年が2019年ということで、大変新しい本です。

本の中に「公認心理師」という言葉が出てくるところからも分かります。

 

新しいからどうということもないですが、著者の集大成的な内容が詰まっているのではないかと推測します。

 

 

もくじ

 

1章 悩み相談とプロのカウンセリングの違い

2章 共感的カウンセリングにおける倫理

3章 人間の心の成り立ち

4章 共感

5章 無条件の受容

6章 防衛と抵抗

7章 転移とは何か

8章 共感的カウンセリングの実際1

9章 共感的カウンセリングの実際2

10章 来談者の質問にはどう対応すればいいか

11章 インテーク面接

12章 カウンセリングの終結

13章 共感的カウンセリングの実際に関わる諸問題

14章 力のつくトレーニン

 

 

では、詳しく説明していきます。

 

1章では、まず筆者が思う「カウンセリングとは」のような、カウンセリング観についてお話されています。

 

2章でも、引き続きカウンセリングの基本ということで倫理のお話です。

この本では、単に○○はこういう理由でダメ、と書いてあるだけでなく、逐一事例が載っていますので、よりリアルに理解できるようになっています。

倫理について読んでいるとしばしば感じる『説教臭さ』みたいなのを感じません。

(普段そんなことを感じるのは私だけかもしれませんがw)

 

3章では、人間の基本的な欲動4つが書かれています。

筆者の持論のようにも思えて、私にはヒットした部分としなかった部分はありますが、そういう捉え方を持っておくと良いのだと思います。

 

4、5章では、来談者中心療法の3条件のうち受容、共感の部分について詳しく書かれていました。

PCAに重きを置いている私としては、非常に参考になりました。

 

特に、「アドバイスはしてはいけないのか」ということについて、機械的に捉えるのではなく、こういうふうに考えると結果的にアドバイスするという考えに至らない、という説明がなされており、私には非常に理解できました。

 

6、7章の防衛、抵抗、転移については、精神分析的な考え方ながら、細かい防衛機制の一覧を載せるわけでもなく、これも実践に役立つ、理解しやすい形で書かれていました。

 

8、9章は、事例です。

この部分以外でも、細々と事例を利用して説明されていますが、ここではがっつり紹介されています。

 

2章とも、ある1回の面接の逐語録と、それに対する非常に詳しい解説があります。

この事例での関わり方が正解というわけではなく、ここは共感できていなかった、こういうふうに返す手もあった、などと解説されているところがおもしろいです。

 

自分だったらどのように関わるだろう…と考えながら読み、解説を見るのは、言葉があっているかどうかは分かりませんが、楽しいです。

非常に勉強になったと感じます。

 

10~12章では、質問、インテーク、終結について、詳しく述べられています。

どれも小さな事例を用いて解説されており、深いレベルで理解できます。

 

13章では、カウンセリングの枠、沈黙、逆転移などについて解説されています。

 

14章では、心理士のトレーニング法について書かれています。

ネタバレにもなりますし、何がとは言いませんが、しっかりやらないと…!と駆り立てられるような気持ちになりました。

 

以上、長くなりましたが、本の構成はこのような感じです。

 

 

評価

 

書籍の読みやすさ(1~5):★★★★★

試験お役立ち度(1~5):★

実践お役立ち度(1~5):★★★★★

 

 絵やら図やらがあるわけではありませんが、事あるごとに事例を用いて説明されているので、非常に分かりやすく読みやすいです。

無駄に専門用語をたくさん出してこないのも、読みやすさに繋がっています。

 

非常に実践的な内容なので、実践には役に立ちますが、何らかの試験に役に立つものではありません。

 

 

 

読んだ感想

 

ほとんど上に書いたのですが、とにかく、事例とかが載っていて分かりやすかったです。

まだケースを持っていない私にも、非常にリアルに理解することができました。

一方、実践的だったため、ケースを持ってからの方が、実感を持てる感覚はありました。

 

実際に沈黙が起きて困ったことが(ロールプレイ以外)ないのに、沈黙の考え方を学んでも、どこか他人事のようになってしまう感じがあります。

ケースを担当してしばらくしたら、また読んでみたい本だなと思いました。

 

定期的に読むと、そのときそのときでヒットする箇所が変わる本だと思います。